こんにちは!
今回は、虫歯菌の代表であるミュータンス菌と
全身疾患の関係についてお話しします。
《ミュータンス菌とは?》
お口の中には様々な虫歯菌がいますが、その中でも最も代表的な菌がミュータンス菌です。
ミュータンス菌の表層には、Cnmタンパクというコラーゲン結合タンパク質を
発現しているものがあり、お口の中に保有している頻度は健常人で約10〜20%とされています。
(Cnmタンパクを発現しているミュータンス菌=Cnm陽性ミュータンス菌)
また、ミュータンス菌には4つの種類(c/e/f/k型)があり、
その中でもk型のミュータンス菌が全身疾患との関わりが大きいと考えられています。
《全身疾患への影響》
①感染性心内膜炎
感染性心内膜炎の原因菌は、感染部位や感染経路によっても異なりますが、
80~90%はレンサ球菌(ミュータンス菌など)が原因となっています。
ミュータンス菌が関係する感染性心内膜炎患者の心臓弁では、
Cnm陽性ミュータンス菌が多数検出され、これをお口の中に保有するとされる
10人に1〜2人の対象者が高リスクになる可能性があると考えられています。
②脳卒中
脳卒中には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒など、
いくつかの遺伝的・環境的なリスク因子が存在します。
しかし、脳卒中のリスクの約3分の1は、
Cnm陽性ミュータンス菌の感染であることが新たにわかりました。
Cnm陽性ミュータンス菌は、進行した虫歯や歯周病から血液に侵入することが可能であり、
健常者におけるCnm陽性ミュータンス菌の保有率は10〜20%ですが、
脳出血や脳梗塞の患者においては有意に高い保有率を示しました。
加えて、Cnm陽性ミュータンス菌の保有者グループでは、
非保有者のグループに比べて、微小出血の出現率が4.7倍ほど高いことも示されました。
近年、Cnm陽性ミュータンス菌がさまざまな全身疾患の悪化に関与する
可能性が明らかになり、感染性心内膜炎や脳卒中の他にも、
潰瘍性大腸炎や非アルコール性脂肪肝炎、IgA腎症などへの影響が示唆されています。
お口の中を清潔に保ち、口腔細菌の量を減らすことによりお口を健全な状態に保つことが、
お口の中だけでなく、全身疾患の予防に役立ちます。
毎日の歯磨きだけでなく、定期的に歯科医院で検診を受けて、
虫歯や歯周病が重症化しないようにしましょう!
参考文献『日本臨床矯正歯科医会雑誌 33巻 2号』
『実験医学 Vol.35 No.7(増刊) 2017』
『歯科衛生士 2022 vol.46』
次回は、口内炎についてお話しします!
上用賀おおたデンタルクリニック