こんにちは!
今回は、歯科治療と感染性心内膜炎についてお話ししていきます。
《感染性心内膜炎とは??》
感染性心内膜炎は、心臓の弁や心膜にできた傷に血液から侵入した細菌が付着し、
細菌が塊を作ることで、深刻な感染症を引き起こした状態のことです。
感染性心内膜炎の発生頻度は、年間100万人に10〜50人と決して多くはないですが、
診断が難しく、重篤な合併症を起こしてから診断されることもありますので注意が必要です。
《症状》
病院やクリニックでの処置後、微熱や4〜5日間連続の発熱、全身の倦怠感、食欲の低下、
体重の減少などが認められ、併せて息切れや呼吸困難などの症状が現れた場合は、
感染性心内膜炎を疑います。
心臓の弁が細菌感染を引き起こすと、塞栓症、脳梗塞、動脈瘤などを合併することがあり、
特に脳動脈瘤との合併は多く、脳出血の可能性もあるので慎重な治療が必要です。
急性期感染性心内膜炎の死亡率は4〜20%と言われています。
《感染性心内膜炎の高リスク患者》
①特に重篤な感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高い心疾患で、
予防が必要であると考えられる患者
・生体弁、同種弁を含む人工弁置換患者
・感染性心内膜炎の既往を有する患者
・複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室、完全大血管転位、ファロー四徴症)
・体循環系と肺循環系の短絡造設術を実施した患者
②感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く、
予防が必要であると考えられる患者
・ほとんどの先天性心疾患
・後天性弁膜症
・閉塞性肥大型心筋症
・弁逆流を伴う僧帽弁逸脱
③感染性心内膜炎を引き起こす可能性が必ずしも高いことは
証明されていないが、予防を行う方が良いと思われる患者
・人工ペースメーカーあるいは植え込み型除細動器植え込み患者
・長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者
《歯科治療と感染性内膜炎》
歯科治療に伴う、菌血症(血液の中に菌が入っている状態)の発症率は、
抜歯ではほぼ100%であり、出血を伴う口腔外科手術、インプラント治療、
歯石除去、感染した歯の根の治療なども含まれます。
菌血症は日常生活における咀嚼や歯ブラシの使用によっても発症し、
お口の中の衛生状態が悪い場合はより引き起こされやすいため、
リスクが高い人は感染性心内膜炎を発症する可能性があります。
また、感染性心内膜炎の原因菌には、虫歯の原因菌が含まれることも報告されており、
虫歯が神経まで進行している状態になると、細菌が毛細血管を通じて常時侵入できる状況になり、
持続的な菌血症が生じると考えられています。
《感染性心内膜炎の予防法》
・医師から処方された抗菌薬を、歯科治療の1時間前に服用する
・お口の中の衛生状態を良くするために、しっかり歯磨きをして、
定期的に歯科医院でクリーニングを行う
感染性心内膜炎は発症すると生命に関わる疾患であるため、
予防的抗菌薬投与を行うことが強く推奨されています。
そのため、主治医から歯科を受診する際の注意点を説明されている場合は、
忘れずに申し出てくださいね^^
参考文献『感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン』
『慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS』
『心エコー Vol.21 No.3』
次回は、虫歯についてお話しします。
上用賀おおたデンタルクリニック